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福島|病棟内感染の経過と多職種による対応|キラッと看護介護実践集より

回復期リハビリ病棟で発生した新型コロナウイルス感染症の病棟内感染の経過と多職種による対応

福島医療生活協同組合 医療生協わたり病院 回復期リハビリ病棟 / 看護師長 渡邉 渚

病棟内感染の概要──計8名の感染が確認されるも1週間で終息

2022年10月7日、回復期リハビリ病棟に入院していた患者の新型コロナウイルス感染症への感染が確認されました。当初、患者は入院期間が101日であり、外部との接触がなかったため非感染であったと考えられることから、院内での感染が疑われました。患者の濃厚接触者に対して抗原定性検査を実施したところ、複数の入院患者への感染が確認されました。

 

その後、感染リスクのある患者や職員への抗原定性検査を広範囲に実施しました。感染リスクのある職員には、症状出現時に自宅で抗原検査ができるキットの配布を行い、さらなる感染拡大の防止に取り組みました。

 

10月14日以降、新たな患者・職員の感染者が発生せず、回復期リハビリ病棟の病棟内感染は終息しました。

 

なお、この病棟内感染により、入院患者7名、職員1名の合計8名の感染が確認されました。

▲患者を特定してお茶を配るためのかご

感染拡大の原因──様々な問題が浮上

感染防御策に関わるものとして、患者のマスク使用が挙げられました。高齢患者で特に認知機能が低下している患者はマスクを適切に着用できていませんでした。

 

次に職員の感染防護レベルが挙げられました。当病棟は、紹介入院が多く、PCR検査を実施して陰性を確認してから転院してきます。

 

そのため、自分の病棟では感染者は出ないはず……という考えがあり、院内のPPE着脱訓練にも積極的な参加が見られませんでした。

 

感染発生初期は感染病棟に空床があったため、感染患者の転棟による隔離を実施しましたが、感染者が増加し、感染病棟での対応も困難となりました。入院受け入れを停止し、病棟内全体がレッドゾーンとなった中で、非感染者は病棟でリハビリを実施していました。そのため、感染患者を担当する看護職員と、非感染患者を担当する職員が接触する機会がありました。

▲ホワイトボードで情報を共有

改善へ──多職種の連携と協働で早期の終息が可能

回復期リハビリ病棟は他院からの紹介患者が9割を占めています。そのため、前院でPCR検査の陰性を確認してから入院するため入院時のウイルスの持ち込みはほぼゼロに近いと考えていました。

 

今回のクラスターは2回目の病棟内発生であり、前回の対策内容、一般急性期病棟でのクラスター対応の内容を基本とし、迅速な対応ができました。1回目のクラスターで「自分の病棟でも感染者は出る」という認識を持つことができ、看護師をはじめ介護福祉士、セラピストがPPEの着脱訓練に積極的に参加するようになりました。勤務上、講習会に参加できない職員は講習を受けた職員から指導を受け、PPE着脱の技術の習得ができました。

 

発生直後からICTの指示によるスクリーニング検査の実施と感染病棟への迅速な転棟を行いました。しかし感染病棟での対応が困難となり、当病棟で感染者の対応をすることとなったため、詰所内にホワイトボードを準備し、連絡事項やICTの指示と現在の状況を掲示、病棟に関わる職員全員で情報の共有を図りました。

 

次に陽性者・濃厚接触者の部屋の環境に関して整備を行いました。看護師は陽性者と濃厚接触者の部屋に入室しているスタッフの把握のため、病室のドアに赤や黄色のマグネットを表示しました。赤は陽性者、黄色は濃厚接触者とし、職員が入室している場合はネームを掲げました。

 

入室しているスタッフが分かることで役割の委譲と、無駄な入室を避けることができました。また、今ある医療機器や医療物品で対応しなければならないこと、余分に物品を入れないようにするため、室内の物品の把握も可視化しました。

 

各チームからは、陽性者と濃厚接触者、非感染者の担当するスタッフの部屋割をチームの掲示板に掲示して対応することで、自由に動けるスタッフを生み出しました。看護助手は、配茶用のカゴを作成してくれました。

 

回復期リハビリ病棟は、脳血管疾患や肺炎後の廃用の患者、高齢者も多く入院しています。そのため、患者ごとトロミの形状が違います。部屋の病床番号に沿って配茶してもらうことで業務の効率化を図ることができました。

 

そして、陽性者及び濃厚接触者は病棟看護師が中心となり対応していたため、特に食事の時間に人手が必要でした。非感染者の対応はセラピストや他病棟の看護師などの応援をもらい、多職種が連携して対応できるような体制を作ることができました。多職種が関わるため、ナースコールには色別の付箋を貼付し、陽性者と濃厚接触者、非感染者が一目で分かるよう区別しました。

 

今回の経験から、クラスターを終息させるためには時間と労力だけでなく多職種の連携と協働が必要であると実感しました。院内の職員全員が協力し、多職種でさまざまなアイデアを出し合い、協働することでクラスターを終息させることができたと考えます。

未来にのこしたいコロナ禍のキラッと看護介護実践集より引用

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掲載日:2024年12月25日/更新日:2024年9月24日