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滋賀|みんなの協力があってこそ 乗り越えられたこと|キラッと看護介護実践集より

みんなの協力があってこそ乗り越えられたこと

しが健康医療生協協同組合 医療生協こうせい駅前診療所 / 看護師長 中澤 信恵

▲一緒に頑張ってきたみんな、前を向いていきましょう

発熱者への対応に試行錯誤して取り組む

開院10年の無床診療所です。新型コロナウイルス感染症の流行が始まったころは、環境や体制も整っておらず、感染者対応はしていませんでした。

 

しかし、診療所のある湖南市では、診察や検査を実施できる医療機関が限られており、受診できるところに困るという声が多く、2020年5月から当診療所でも発熱者の診察を一般外来とは別室で始めました。当時は、熱があっても診察予約なしに来院される方も多く、診療所入口で看護師がトリアージ対応。

 

6月から発熱外来として一般外来とは時間を分けて診察する体制に変更。2021年2月からPCR検査も実施。

 

陽性かもしれない患者と接することへの不安が職員内でも強くありましたが、やるからには頑張ろうと一致団結です。診療スペースの隔離、感染予防の方法…何をどこまでどのようにやればよいのか?試行錯誤の日々でしたが、情報を集めつつ不足する物品の調達に苦労しながら、なんとか対応してきました。職種関係なく職員全員に、発熱者対応の流れを周知させて対応することには苦労しました。

 

ニーズに寄り添いできることは何でも実践

感染リスクの高い発熱者対応は、看護師と医師にて行っていましたが、事務職員も電話での相談や発熱外来の予約誘導などの対応に追われました。看護師は、発熱外来受診者の検査依頼の準備などを一般外来の合間に行います。来院後は車で待機してもらい、まず看護師が駐車場に行って対応を始めます。

 

初めての方には問診票の記入、そして保険証の確認、検査希望があれば検体の取り方の説明、診察の流れや処方箋・会計の取り扱いについて説明。一般外来が終われば、医師と看護師が発熱外来の診察室に入ります。外回りの看護師と連携し、駐車場から診察室へ患者を誘導し、診察を受けてもらいます。

 

陽性者の届け出も一苦労。PCR検査は外注なので結果が判明するのは後日です。全員への結果報告と症状確認の連絡をし、市への届け出用紙の記入と入力作業。第7波では、1外来で20名を超える患者があり、休日が間に入ると50名程の連絡が必要となりました。電話をかけると、いろいろな不安や家族のこと等どうしてよいかわからないことも多いようで、質問に答えるだけでも大変な作業となりました。

 

行政からの連絡もスムーズにいかない状況で、できる限り話を聴くように心がけていました。自己検査での陽性者への対応や届け出システムの変更など、対応が度々変わることでも混乱が続きました。2023年1月からは、インフルエンザとの同時流行もあり、同時抗原検査に変更しましたが、診察の流れが変わり現場の混乱もありました。

 

発熱外来で特徴的だったのは、診療所を初めて受診される方が多いことや、地域柄もあってブラジルやベトナムなどの外国の方の受診が多いことでした。コミュニケーションの難しさ、携帯電話を持っていないなど様々なケースが出てきました。急遽、5カ国の言語での説明書作成などの対策をとりました。

 

市へ問い合わせて当院を紹介された方もおられ、普段、病院にかからない方や、かかりつけ医では検査ができない方、しんどくてもどこで診てもらえるのかわからなかった方がたくさんいる状況が浮き彫りになりました。長引く発熱外来での診察では、環境を整えることも大変でした。夏は日差しも強く、防護服を着ていると汗だく。

 

冬は雪が降る中、凍えながら駐車場で対応。雨の時は患者に傘を差し、濡れながら誘導。診察室は換気のため入口は開けたままなので、冬は寒く夏は暑く、虫も入ってきます。季節によりいろいろ工夫してきました。徒歩で来院された方の雨風をしのげる待機場所が必要になり、急ごしらえで小屋を設置するなど、悩みながら環境を整えていきました。

 

▲診療所管理部から看護部へ、頑張りの評価を表彰状にして

「大変なのにありがとう」の声に救われる

発熱外来患者の診察は、一般外来を調整しながら診察時間の最後の予約とし、訪問診療などの午後の業務までの時間を工夫して行いました。休憩時間もまともにとれず、忙しさに追われる毎日でした。受診される方は感染への不安や体のしんどさからか、対応への怒りや不満などをぶつけてくることも多かったです。

 

納得できないと暴言を浴びることも度々で、精神的にもしんどくて患者対応がつらくなることもあり、かなり切羽詰まった状態になった時期も。通常業務も行いながら、自分自身の感染予防にも配慮し、患者対応をすることは、かなりのストレスであり心身ともに負担となりました。看護師間の関係にもゆがみが出ることもありましたが、そんな時こそコミュニケーションをとってなんとか乗り切ってきました。そんな中、「大変なのにありがとうございます」「ここで診てもらえて助かりました」などのお声をいただけることもあり、本当に救われる思いでした。受診される方の協力がなければ、発熱外来の対応は難しかったと思います。

 

発熱外来の対応を始めた2020年6月から2類解除された2023年5/7まで、のべ3708名の診察を行い、のべ2961名の検査を実施してきました。

 

発熱外来の受診で初めて診療所を利用された方は1431名、そのうち外国籍の方は71名。やむを得ず人数を制限しなければならないこともありましたが、診療所をかかりつけとされている方はもちろん、地域の方が受診できずに困ることがないようにと、みんなで協力して最大限の努力をしてきた結果です。

 

 

未来にのこしたいコロナ禍のキラッと看護介護実践集より引用

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COVID-19が猛威を振るい始めてから3年以上が経過し、ワクチンや治療薬が承認され2023年5月8日に感染症5類になりました。通常の医療を継続しながら、感染対策や陽性者の対応・地域の問い合わせに翻弄させられた日々、「まず診る、支援する、何とかする」を実践した日々を忘れてはいけない。後世に残し継承するために、全国のキラッと看護介護のほんの一場面ですが一冊にまとめました。このコロナ禍で起きたことが、なかったことにされないように今後に同様な事態が起きた時に同じことが繰り返されないように、いのちに寄り添った生きやすい社会であることを切に願います。

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掲載日:2024年11月25日/更新日:2024年6月25日