鳥取県|コロナ禍での取り組み |キラッと看護介護実践集より
コロナ禍での取り組み -診療所でできること-
鳥取医療生活協同組合 せいきょう子どもクリニック / 看護主任 壽村 恵美
2診体制で診療、病児保育施設も併設
せいきょう子どもクリニックは、2001年12月に鳥取生協病院小児科の外来部門として生協病院の近くに移転オープンしました。鳥取市では初めての病児保育施設「キッズルームこぐま」も同時に誕生しました。地域の子育てが孤立しないように、月に1回子育て支援サークル「わいわいクラブ」も行っています。半径10km圏内に十数件の小児科がありますが、鳥取駅やバス停も近くにあり交通に便利であることと、当日に予約を取るWebシステムを導入しているので、待ち時間が少ないという強みを持っています。外来患者数は、1日平均40~50件で多い時は80~90件になる時もあります。病児保育も1日平均6~7名、年間約1200名の利用があります。
子育て支援サークルも平均2~3組の参加があり、多い時は5~6組の参加があります。現在、医師2名・看護師5名(内嘱託2名)、事務3名、保育士9名(内嘱託7名)のスタッフで運営をしています。外来では、断わらず待ち時間を少なく診療ができるように、2診体制で診療を行っています。病児保育の利用が多い時は、看護師が保育に入るようにし保護者の不安や負担を軽減できるように努めています。
コロナ禍で外来激減、提携病院支援やワクチン接種に取り組む
2020年新型コロナウイルス感染症の広がりを受け、外来人数が1日10~20件と減少し病児保育の利用も0人となることがあり、経営に大きな打撃を受けました。経営の立て直しを職員間で話し合い、連携病院である鳥取生協病院の玄関前で利用患者様に体調確認や県外移動の有無の聞き取り、非接触での検温等トリアージの協力と採血や点滴など外来診療の援助を週に2~3回行いました。また、県内の若桜町で月に2回ある高齢者の新型コロナワクチンの集団接種やわかさ生協診療所で毎週水曜日に行うコロナワクチン接種の協力に行きました。最初は、どのように患者対応していけばいいのか不安が多くありましたが、先に参加したクリニックスタッフからの引き継ぎや鳥取生協病院のスタッフの方の声掛けで何とかスムーズに患者対応ができるようになりました。
そして、鳥取市より事業所での新型コロナワクチン接種の依頼があり、鳥取市や若桜町でワクチン接種の流れや介助を見てきていたのでそれを参考にして行うことにしました。12歳以上のワクチン接種だったので、診察は医師、ワクチン接種を看護師が行うと意思統一しました。最初は、役割分担が定まらず苦労しましたが、回数を重ねるごとに担当が決まりスムーズにワクチン接種が行えるようになりました。
2021年より県外への往来や新型コロナウイルスの感染による休園、休校などの確認のために問診票を作成し記入していただくようにしました。患児だけではなく、保護者の確認も必要なため保護者用と患児用の2種類を作成しました。職員にもコロナ感染者が出てきたので、個々の体調管理の確認のため、出勤時には体温計測とチェック表に記入をしていくようにしました。
病児保育では、新型コロナウイルスでの休園や休校期間中の利用があると他の患児に感染する可能性も考え、鳥取市に休園があれば伝えてもらうように依頼しました。保育園の状況確認をしながら、安全に病児保育の利用ができるように気をつけました。病児保育の利用中に、濃厚接触者該当の連絡があり、保護者の迎えまで別部屋での対応とし、報告があった園に通う他の利用者への確認の声掛けなどに苦労したこともありました。
断りのない診療で患児・保護者の不安を軽減
2022年の夏、感染症対応部屋で診察・検査を行った職員から陽性者が発生したため、換気がしっかりできる駐輪場に診察と検査場所を作ることにしました。最初は、布を使い目隠しをしていましたが、雨でぬれた時に汚れるため、保護者の方から目隠しができていないと指摘があり、認定看護師と相談し防水・防火カーテンを設置しました。診察をする際、保護者に「外からの診察ですみません」と説明すると、「大丈夫です」と言ってくださいました。
夏場は冷風機を使用して熱中症予防にこまめに水分補給を行い、冬場は暖房機を使用し寒さ対策にガウンの下に防寒服を着用するなどし、職員の体調管理をしながら、外での診療を続けました。発熱患者の対応も、以前は問診を行い発熱があれば感染症対応部屋が空くまで車で待機していただき診察を行っていたので、待ち時間が長く保護者や患児に負担をかけていました。その後、感染症対応部屋だけでは、診察が間に合わなくなると、駐車場でも診察をするようになりました。
しかし、大雨や雪が降ると傘をさしての診察となるため、とても困難でした。電話での問い合わせが多くなってくると、時間を指定し来院時間を設定し何人かまとめて診察を行うようにすることで、診察や検査がスムーズにできるようになりました。行政より陽性者の健康観察と検査キットの配布の依頼もあり、健康観察の電話かけの時間、渡す物やパンフレットの内容、伝え方の確認を職員間で意思統一しました。
それにより、診察で陽性者が出た際、家族分のキットの配布、陽性の報告の仕方、陽性者の療養期間・濃厚接触者の待機期間の説明、健康観察のチェック項目と時間の説明をスムーズに行うことができました。何度も説明に行くと何を伝えたか分からなくなることもありましたが、保護者から「他ではここまで説明をしてくれない」「いろいろと教えてもらえてよかった」と言われました。健康観察から重症の患児を入院に導くこともできました。1日1回の健康観察は、最初は1日数件だったのが多い時は1日40件近くになり、対応がとても大変でした。健康観察の電話かけで症状の悪化や継続治療が必要な時には、医師が電話やオンラインでの診療を行い、処方を出すようにしました。薬も連携している薬局に配達していただくことができました。
連絡時間の説明をしていてもつながらないことがあり、診療が終わってから再度連絡し確認することもありました。それでも、健康観察の最終日には「毎日電話をしてもらってありがたかったです」「大変お世話になりました」と保護者から感謝の言葉をいただき励みになりました。
今回、新型コロナウイルス感染症の拡大により、他院で診察を断られてどこに頼ったらよいのか不安になっている保護者が多くみられました。そこで、どのようにしたら診察ができるのか、診療の待ち時間を少しでも短くするためにクリニックスタッフ一丸となり対応していきました。断りのない診療を行っていったことで、患児や保護者の不安を軽減できたと思います。新患も多く大変でしたが、その後の継続治療につながりました。これからも断りのない診療が行えるように、患児や保護者への対応や診療時間の工夫が必要と考えます。
未来にのこしたいコロナ禍のキラッと看護介護実践集より引用
もっと読みたい人に!書籍のご紹介
未来にのこしたいコロナ禍のキラッと看護介護実践集
COVID-19が猛威を振るい始めてから3年以上が経過し、ワクチンや治療薬が承認され2023年5月8日に感染症5類になりました。通常の医療を継続しながら、感染対策や陽性者の対応・地域の問い合わせに翻弄させられた日々、「まず診る、支援する、何とかする」を実践した日々を忘れてはいけない。後世に残し継承するために、全国のキラッと看護介護のほんの一場面ですが一冊にまとめました。このコロナ禍で起きたことが、なかったことにされないように今後に同様な事態が起きた時に同じことが繰り返されないように、いのちに寄り添った生きやすい社会であることを切に願います。
全日本民医連 看護委員会
掲載日:2025年3月25日/更新日:2024年6月25日