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栃木|つながるカフェ★カムカム くらしを守るまちの保健室 |キラッと看護介護実践集より

楽しみながら地域に飛びだそう! 誰もが気軽に立ち寄れる地域の居場所づくり。『つながるカフェ★カムカム くらしを守るまちの保健室』の取り組み

栃木保健医療生活協同組合 生協ふたば診療所 / 看護師長 諏訪 陽子

 

▲金曜日開催の「みんなの食堂」

はじめに──気軽に立ち寄り相談できる「まちの保健室」を関係団体と共同で

診療所でSDHの視点で患者に関わっていると、病気だけでなく、「地域とのつながりがない」「孤立している」などの問題を抱え、それでも「まだ私は大丈夫」と、介護保険申請など希望されずにつながりがもてない心配な患者さんによく出会います。また、精神疾患を持つ親など、複雑な家庭環境の子ども、生活困窮など、いわゆる『気になる患者さん』に出会い、診療所でどのような支援ができるのか悩むことがあります。そんな人たちが気軽に立ち寄り相談できるまちの保健室を、2022年10月より、診療所と関係性の深い他社会福祉法人と共同で立ち上げ活動し始めました。

活動の経過──地域に少しずつ浸透「人生の楽しみ増えた」と毎回参加者も

2021年12月から、まちの保健室立ち上げのための実行委員会を月1回実施し、運営費はおのおの2万5000円出し合い、月に5万円としました。実行委員メンバー構成は、ふたば診療所(看護師・事務)・地域包括支援センター(社会福祉士・保健師)・社会福祉法人(ケアマネ)の多職種から選出しました。暮らしの保健室の勉強会や、他のまちの保健室を見学し、自分たちがどのような地域の居場所づくりをしたいか考え、目的や内容決定をしていきました。場所探しは、訪問診療終了になった患者家族に「まちの保健室」の目的を伝えると、家賃なしで光熱費のみで貸してもらえることになりました。

 

パンフレット作成・ロゴ・看板の作成では、関わる人がワクワクするような、入ってみたいと感じるようなデザインを、みんなで考えました。8月には地域の方々に、私たちの活動を理解してもらい、必要な方に声をかけてもらう仕組みにするために、自治会・民生委員・組合員・小学校にも出向き説明を行いました。目的は「誰もが安心して住み慣れた地域で、できるだけ長く健やかに暮らせるまちづくりとして、まちの保健室は人々のつながりの場、また気軽に立ち寄れる場所とする。私たちは、医療・介護・福祉それぞれの強みを生かし連携して社会的課題の解決に取り組んでいく」に決定。開催頻度は、週2回で、火曜日はサロン(14時~16時半)、第4金曜日は子ども学習支援・食堂です(15時半~18時半)。みんなの食堂の料金は大人200円、子ども無料としました。

 

火曜日のサロンには平均10数名の地域の高齢者の参加があります。血圧測定をしながら、体調の確認や困ったことはないか等、話を傾聴します。体操・歌のボランティアや講話なども行い、交流の場や学びの場にもなっています。診療所で、地域との孤立を感じた際にパンフレットを渡して参加をすすめています。

 

80歳女性は「カムカムができてよかった。人生の楽しみが増えたのだから」と近所のお友だちと毎回参加しています。金曜日のみんなの食堂では、こどもの参加は平均15人前後です。子どもの宿題をボランティアが見守り、17時半には夕食が出来上がり、楽しく美味しくみんなで食事をいただきます。

 

子どもたちの居場所とするため、もっと頻回に開催したいというボランティアの声で、今年度より毎週金曜日の開催になりました。クリスマス・七夕・夏祭りなどを企画したり、夏休みには子どもたちに平和の話をして、原水爆禁止世界大会に持参する折り鶴を子どもたちと折りました。時々学校の悩みを打ち明けることもあり、子どもたちの話を傾聴しています。最近、近くの小学校の校長先生や福祉相談員が活動を聞きつけ、見学に来るなど地域の方にも少しずつ浸透してきています。

▲自分たちでデザインした看板

月1で実行委員会実施 生き生きとした活動がポジティブな連鎖を生む

他法人の介護事業所との協同事業であり、事業所内だけで決められないことも多く、円滑な情報共有が難しいことがあります。そのため月1回の実行委員会を実施し、議事録の作成、メールやLINEで意見交換や振り返りを行っています。職員やボランティアからいろいろな意見が出て、対立や葛藤が生まれることもありますが、改善の検討をし、地域のために活動するカムカムの目的や内容がぶれないよう対話を重ねています。何のために、この活動をするのか、目的・内容を共に考え、関わる職員・ボランティアが目標を共有してきたことが、同じ方向を向くことにつながり、大きな力となっていると感じています。

 

「参加者の居場所にするためにはどうしたらいいか」と各メンバーが多様なアイディアを出し、自主的な活動が生まれています。『カムカム』という場に出向くことで、交流が生まれ、そのコミュニケーションによって『自分の居場所』となっています。カムカムの参加者だけでなく、職員やボランティアも同様で、この活動に参加できていることに喜びを感じ、一人ひとりが生き生きと楽しみながら活動していることをが、ポジティブな連鎖を生んで、それが活動を継続していく原動力となっていると実感しています。

 

今後も診療所の中で、地域とのつながりが必要と感じた患者さんにカムカムを紹介し、外出のきっかけをつくり、そこがほっと安心できる居場所となるよう、診療所全体で活動していきたいと考えます。また、この活動を継続していくことで、本当に困っている人の居場所になればいいと感じています。

 

 

未来にのこしたいコロナ禍のキラッと看護介護実践集より引用

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掲載日:2024年9月27日/更新日:2024年9月17日