人権cafe vol1|医療・介護の現場で考える人権
子ども(和謝)を権利の主体 として社会的に保障
1989年、国連総会で「子どもの権利条約」 (以下、権利条約)が採択されました(日本の批准 は1994年)。子どもの権利論は、戦争で多くの 子どもが無惨に殺傷された反省から、大人は子ど もに最善の保護や管理を与える義務があるとさ れたことが出発点でした(「子どもの権利に関す るジュネーブ宣言」[1924年]、「児童の権利宣 言」[1959年]など)。
権利条約はそこから一歩すすめて、親や教師な どの大人による保護や管理は、ともすれば子ども を大人の意のままに操作することにつながり、子 どもの成長を阻害することもあるとの認識を ベースに構想されました。つまり、大人がよかれ と考える「子どもの最善」だけでは不十分であり、 子どもの意思や希望をしっかりと考慮しなけれ ばならないことを示したわけです。つまりこれは、 子どもを集団でとらえるのではなく、一人ひとり 固有の生存と発達を大切にしなければならない、 ということでもあります。それゆえに大人は、子 どもが発する様々な信号を感じ取り、子どもと真 剣に関わり続けねばならないのです。
こうしたことが、right(正しいすじみち=権 利)にならなければいけないと世界に呼びかけた のが権利条約です。子どもを権利の主体としてそ の地位を社会的に保障しようというのはそうい うことです。
競争的な社会から子どもを守ろう -国連が勧告
「これまで国連は、日本政府の報告書に基づき、 5回にわたって勧告してきました。主な内容は 新自由主義的競争社会から子どもをいかに守る か、2体罰・虐待・性的搾取・自殺などの問題解決、 3子どもの意見表明を保障する環境の提供、にま とめられるでしょう。 「自己責任・受益者負担を原理とする新自由主義 的改革によって、保育・教育など子育てを支える 機能は「民営化」の名のもとに商品・サービスに なっていきました。子育ては私事化し、個々の親 のみの責任となり、そうなると問題が起きないよ う予防のために管理主義が強化されます。親は共 働きの多忙な日々の中、子どもをじっくり受けと め対話することが難しくなっています。経済的困 窮も要因となり虐待が増えるのも当然でしょう。 学校なども連動するように管理主義が過ぎて権 威主義化していきます。ブラック校則問題が生じ るのもこうした背景からです。子どもが意見表明 することはますます難しくなります。 「さらにコロナ禍によって、子育て家庭の貧困や 虐待の深刻化、子どもの自殺率の上昇、抑うつ傾 向・情緒障害など心やからだの異常、保育・学校現 場の疲弊など困難は深まっています。今こそ権利 条約の理念が見直されるべきです。
リツイートしたたけなのに
ポチっとするだけで情報を発信できる ツイッターの「リツイート」、たいへん便利な 機能ですよね。でもそのリツイート、 ちょっと待った!あまり深く考えずに 使っていませんか。実はリツイートするだ けで犯罪になったり損害賠債請求された りするおそれがあります。
例えば、もしリツイートした内容が実は 嘘だったらどうでしょう? 自分に関する展 の情報を流されたら、たとえそれがリツ イートであっても嫌ですよね。リツイート は人を傷つけてしまう危険性があるのです。 「実際に、他人のデマツイートをリツイー トしただけなのに、名誉毀損」として裁判 で訴えられて損害賠償をする羽目になっ たという事件が起こっています。「でも、本 当のことなら大丈夫でしょう?」と思う方 もいらっしゃるかもしれません。ですが、 日本の法律では、本当の情報を流した場合 であっても名誉毀担罪が成立することが あるとされています。従って、本当の情報 だから大丈夫ということにはなりません。 それに、名誉毀損罪以外にも、信用毀損罪、 業務妨害罪、侮辱罪などといった犯罪に当 たるおそれがあります。実はそれだけでは ないのです。過度に性的な内容を含めば性 犯罪に当たったり、選挙期間中のリツイー トは内容によっては公職選挙法違反に なったりと、いろいろな法的リスクがある のです。
ところで、こういったリスクは、ツイッターの リツイートだけの話ではありません。「い いね」など他の機能であっても、フォロ ワーのタイムラインに投稿が流れてしま うという点が同じであれば、やはり大丈夫 という保障はありません。インスタグラムの 「リボスト」など、ツイッター以外のSNSの 機能でも同様のリスクはあります。
果たしてあなたが発信しようとして いるその情報は真実でしょうか。その情 報が真実だとしてもその発信により傷 つく人はいないでしょうか。ボタンを押 す前に少し立ち止まって考えるように してみましょう。
あすわか弁護士
片木 翔一郎
掲載日:2021年6月1日/更新日:2023年5月30日