「地域医療構想」学習会ご報告|「看護師確保対策」と「予算」について
「地域医療介護総合確保基金」学習講演の報告
1.はじめに
国は「地域医療構想」の中で、1ベッド削減するごとに410万円の助成金を出すというやり方で、いわば病床の大幅な減反政策を推し進めています。現在、長年の減反政策で大変なコメ不足となっているように、このままでは地域医療を崩壊させていく事につながるのではないかと考えます。
わたしが44年間書記として勤めている全医労では、国が強行しようとしている424もの公立公的病院再編統合阻止のためにたたかっていますが、本日は、この構想の中での看護師確保の位置づけを報告したいと思います。
2.「看護師確保対策」に必須の政策枠組み
看護師不足は深刻で、これまでの経営体単位や、自治体単位での対策では抜本改善は難しく、看護師の養成と確保は国家的課題としての位置づけが必要です。私なりに整理したものですが看護師確保対策には、①養成・教育、②就職、③キャリア形成、④勤務環境改善、⑤再就業、復職支援の5つが柱として必要だと思います。
ところが国の「地域医療構想」は、最大の国家資格職種である看護職に真っ当な賃金水準を保障するような制度設計となっておらず、診療報酬を原資とする低医療費水準の中で放置されているのが実態です。「賃金・労働条件改善」が国の政策として確保対策の要と位置づけられていない「欠陥政策」だというのが結論です。そのために、いわゆるリクルート分野で、紹介業者が暗躍をしている。それから、派遣看護師という働き方がじわじわと進んできている問題があると思います。
3.「地域医療介護総合確保基金」の問題点
問題点は大まかに下記5点です。
⑴ 2014年以降「看護師確保対策費」の予算総額が明示されなくなった
「基金」に内包されたことでブラックボックスとなってしまい、自力で集計しなければ「看護師確保対策」に予算が使われているのか増えているのか減っているのかが判らなくなっています。都道府県ごとの予算額と国としての総額を明らかにさせる必要があります。
⑵厚労省が基金に関する「標準事業例及び標準単価設定」を都道府県に通知
都道府県の実情に合わせて執行するとされていますが、実態は厚労省が「標準メニュー」を示し、そこから選択させるように誘導しています。しかも財務省は「地域医療構想」の達成に「不要なもの」(自治体独自の施策等)を厚労省が認めないように、けん制をかけ指導しています。
⑶看護学校経営を大学化(運営委託化)していく流れ
独立行政法人化の中で独立採算が強く求められ、学生数も減少する中で、看護学校廃止や委託化の方向へ流れています。結果、「看護学校運営補助金」は縮減されていきます。
⑷看護師を増やすのではなく質的なキャリア形成(特定行為)への補助金が増加
特定行為に関わる様々な補助金が厚労省の推奨の中で大幅に増加しています。が、看護師を増やす量的な対策は置き去りです。
⑸コロナ禍の2019年以降、2023年までは毎年総額100~500億円が未執行となっています
消費税増税に伴い「基金」も増額されていますが、地域医療構想実現に向けた予算が増えているだけで、都道府県からの予算要求が少なく2019年度以降は毎年追加募集している実態もあります。厚労省グラフの通り令和5年度から6年度には「介護分」が△210億円、6年度から7年度には「医療分」が△120億円減額となっています[令和7年3月3日 第21回医療介護総合確保促進会議資料/厚労省より]。
予算未執行と予算要求を出していない県があるため減額されています。このことは、軍事費拡大にもつながります。
予算未執行分はどの様に使われているのか?も明らかにされていません!
参考: 医療・介護の施設整備、人材確保など支援する医療介護総合確保基金、執行率は医療分野76.4%、介護分野77.3%―医療介護総合確保促進会議 2025.3.5.(水)グローバルヘルスコンサルティング(GHC)ウェブサイトより
4.今、なにをすべきか
①各都道府県の「基金」及び看護師確保対策の各予算項目の具体的内容と予算額、執行状況を把握するために、厚労省に資料を出させる。
②補助金は「厚生労働省の示した枠組み」に縛られているか? それとも、都道府県単独予算の執行となっているのか? または、ミックス予算なのか? を明確にし、予算補助額の拡大、補助カ所の拡大で予算総額の増額を求める必要があるのではないか?
③私たちの「要求」実現のためには、何が必要か?―個別予算の増額が必要なのか?現行の予算項目にない、新たな項目新設を求める必要があるのか?=それは、厚生労働省の標準事業項目にあるのか?他県で実施されているのか?なければ、本当に独自の県単独補助の創設を求める必要がある。
④単に看護師確保予算を増やせとか、院内保育所補助額を増やせでは弱く、「こういう問題・課題に補助金を幾らつけてほしい」と具体的な要求を練り上げる必要がある。
以上
掲載日:2025年5月22日/更新日:2025年5月22日