2024年(第5回)全国看護学生アンケート調査の結果について
■調査の目的
コロナ禍で、看護職を目指す学生が、保護者の収入減少やアルバイトが出来なくなる中で、経済的困窮に陥る事例が現場(加盟看護学校教職員や加盟医療機関の看護学生担当者など)から多数寄せられた。全国的な実態を把握するため、2020 年からアンケート調査を行い、本調査をもとに「給付型奨学金」や「学生支援緊急給付金」の拡充、高等教育無償化をはじめとした、経済的不安なく看護職を目指せる学びの環境改善を毎年国に求めている。
■調査の方法および集計
民医連内外の現役の看護学生に協力を呼びかけ、2024 年4月8 日~7 月31 日の期間、Google フォームで回答を求めた。学校所在地県名以外は無記名で行った。37 都道府県955 人の看護学生から回答を得た。学校種別では大学がおよそ2 割、看護専門学校(3 年制)がおよそ7 割。また、8 割が実家で家族と同居している学生であった。
■結果
①世帯経済状況
世帯経済状況;回答した473 人の内のおよそ半数が世帯年収380 万円未満。また、コロナ禍以降(2022 年から)、仕送りや小遣いなどの親からの援助の金額が大幅に減少し続けている。回答した917 人の看護学生の内の6 割が親からの援助を「受けていない(0 円)」と回答。
②本人の経済状況
経済的にゆとりがない時に節約しているものの内容は「被服費」「嗜好品費」「食費」「交通費」と例年同様だったが、今般、初めて物価高騰での生活の変化について回答を求めたところ、「変化なし」と単一選択した学生は14%(131 人)のみ。圧倒的多数が「節約し」「預貯金を切り崩し」「アルバイトを増やしている」と回答した。
③学費
在学期間の総額は200 万円以上350 万円未満が、全体の分布の半数を占めた。学費全額を、家族・親族が負担していると回答したのは32%で、7 割の学生は奨学金を借りアルバイトをしなければ看護学校に通えない。また、私立看護大学では、そのほとんど(75%)が500 万円以上かかると回答。8 割の学生が学費は高額と感じていた。また、「もしも学費が無償になったら何がしたいか?」との設問に対して「医療機関への受診14.4%」「食生活の改善19.5%」「家族の生活費の補填32.9%」が多く、看護職を目指すための経済的負担の重さが窺える。
④奨学金
3 割が受けていないと回答しているが、受けていない事由を尋ねたところ「必要だったが受けられなかった」「返済が不安で借りられなかった」が4 割以上を占め、実際にはおよそ9 割の看護学生が奨学金を必要としている結果となった。また、貸与型奨学金(学生ロ-ン)の卒業時返済金(借金)の総額は、100 万円~200 万円の分布が最も多く、200 万円以上が半数を占めた。返済に20年間かかると回答した看護学生も散見された。同時に、返済が「とても不安」との回答が増加し、3 年前(2021 年)に半数居た「不安なし」は2 割を切った。
⑤アルバイト
87.6%の看護学生がアルバイトをしていた。一日のアルバイト時間が4 時間以上6時間未満との回答が最も多くおよそ5 割。内、6 時間以上が2.5 割だった。アルバイト日数は3 日以上が6 割。5 日以上との回答も1 割あった。また、4 時間以上アルバイトしている学生の3 割が4 日以上とほぼフルタイムで働いていた。アルバイトによる睡眠不足や疲労蓄積で学業に支障があると回答した学生はおよそ7 割に上り、『命に関わる大切な職業なので、アルバイトではなく勉強に集中したい』という学生の声は重く、切実である。
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掲載日:2024年9月9日/更新日:2024年9月9日